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    房一は面喰つて、ぽかんと口を開けた。

    「何分ごらんの通りの未熟者でして――」

    「はあ、どうも」

    うまい工合だと感じた房一はすかさず云つた。

    徳次は房一が顔を洗ふ間傍に立つて眺めていた。それからふいに訊いた。

    「畜生、弱い奴だ」と、根津は笑った。

    ドイツ潜航艇の英商船撃沈はその年の一月頃からはじまつていた。日本も交戦国の中に入つていたにちがひないが、商船の被害も大したことはなく、日本の艦隊は太平洋方面に出動しているらしかつたが、南洋占拠をのぞいては格別報道されることもなく、したがつて欧洲大戦による日に上昇する好景気の他には、戦争をしている気分は殆どなかつた。

    「おつ!こりあいかん」

    今頃になつて、男はさう訊き、盛子がそれに答へる前に、ひとりでうなづいていた。

    「おう、これか」

    「それあ、あんた」

    盛子は、歯切れのいゝピツと語尾の跳ね上るやうな調子で、愛想笑ひをしながら小谷に訊いた。

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